たった数人の為に建造された小学校。そして今はもう、休校という名の廃墟になった。 石段を昇って登校した子供もわずか数人。無駄遣いとは言うまい。これは美談だ。 わずかに1台だけ残った遊具が寂しく子供が戻るのを待つ。 ガラスを割らずににはおれない者たちが、世の中には確実に存在する。負のパワー。 植物とコンクリートの境界線。 全ての時計は、時限式である事の証明。諸行無常記録器。 DQNラクガキによって哀愁を失う元・建築物。それは悲劇から喜劇に変わる。 花子さんもオチオチ出現できない世の中は、滅びる価値がある。 CG以前にはイラストによって表現されていた事も忘れられて久しい昨今。 ワープロ以前には書き順は論理的な価値を持っていた。 オウムが残した社会的影響は大きかったが、オウムの一面しか知らない者が大過ぎる。 独特なレタリングの「教室」。「殺室」にも見えるのがオツだ。 行く手が解放されている廊下。土砂への解放戦線。 ダムが見える小学校。この土地に固執した人々が産み出した風景。何でも沈める行政。 この中に隠れた小学生は、隠れたまま忘れられて、思い出と共に腐敗した。 隅に寄せられた机と椅子は、移動者の思惑と無関係に孤立を体現する。 レコードプレイヤーも、今時はHDDの中身に見えてしまう。 床材とガラスが織り成すモザイク。文明の脆さ。人類の儚さ。実存とは不安定だ。 オルガンから切り放された鍵盤は、喪に伏すわけでもなくモノトーンだった。 まるでトーチカのような風景の校舎裏側。現実感のない人工空間。 まるでスネているかのように足を投げ出す机。可愛い仕草の廃棄物。 ミイラカーテンは、今はもう何も仕切らない。 窓の外は明るい水辺。校舎の両眼はそれを眺めて退屈な時間を過ごす。 崩壊が進む校舎にトドメの土砂崩れ。トラロープは意味を失いながらも張り続ける。 ただ昇らせる為だけが目的と見える石段を降りて、ここを後にした。
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