九龍城の記憶 2006年06月06日 pcfx



一昔前、香港の九龍側の北に、「九龍城」と呼ばれた雑居ビル密集地帯があった。

pcfxがまだ若く美青年だった頃、香港によく行っていた。香港は「オバチャンがブランド物や

ニセブランド品を買いに行く」といったイメージがあるだろうが、実は香港は狭いながらも

物凄く奥深い街だ。いや、だった。今はもう単なる小奇麗な都会だが。


さて、香港と呼ばれるエリアは、香港島と九龍半島部に分かれている。その二つをトンネル

や船が結んでいる。香港島にも観光客がおよそ寄りつかない隠れ面白スポットが結構あった

のだが、今回は置いておく。


九龍(カオルーンとかガオルンとかクーロンとかキュウリュウとか適当に呼ばれている)サイド

を北に向かって少し行くと、九龍城と呼ばれる雑居ビル密集地帯があった。再開発される直前

まで人が住んでいたので廃墟ではなかったのだが、その密集ぶりというのがまた物凄かった。

軍艦島と同レベル、若しくはもっと凄い密集度だった。九龍城の正体は雑居ビル密集地帯

だが、一般には「スラム」とか「マフィアの温床」とか「暗黒地帯」とか呼ばれていた。



この九龍城と呼ばれるエリアは、イギリスが統治していた頃に中国との緩衝地帯としての

役割を持っていた。緩衝地帯なので中国もイギリスも干渉できず、その為にマフィアのアジト

が作られていた時代もあったようだ。つまり無法地帯だったわけだ。


またユルユルな建築法適当な建設会社手抜き職人吝嗇オーナーのコラボレーション

によって、狭い土地に次々と無造作にビルが建てられまくった



その結果、元あったビルを囲むようにビルを建て、中心のビルの住人は外に出られなく

なった。仕方なく中心のビルから囲んだビルの廊下に板を渡してそこを通路とした。


また、あるビルの真横に、1ミリの隙間もなくビルを建てる。隙間がないのだから密着して

いる。密着するのなら、その面のカベは作らずに済む。そんなわけでビルの1面を隣のビル

のカベを拝借する建築が行われた。


あるビルは外の階段をある日突然壊され、突貫工事でその場所に別のビルをぶっ建てられ

たので降りる事も登る事もできなくなった。仕方ないので違うビルの5階なら5階同士、板や

ハシゴやロープでつないで上り下りする事になった。


老朽化したビルは、その建築のいい加減さも手伝って、ある日突然三階〜六階部分が潰れ、

二階の上が七階になるという不思議な状態になった。普通、そうなったら解体するのだが、

もうビルに囲まれて解体作業すらできない状態なので放置され、そこに平然と住み続けて

いる。潰れた階の住民は潰れっぱなし


その他、うっかり下水管を付け忘れたビル、うっかり四方をカベに囲まれてデッドスペースに

なったビル、そこに無理矢理穴を開けて住む奴、そして酸欠で死ぬ奴、雨水の逃げ場がなく

2階まで年中水没しっぱなしのビル、床が抜けたので仕方なくそのまま上下で同居する奴、

隣のカベを拝借していたビルで、その隣のビルが倒壊してカベを失い、仕方なくそのまま

住む奴、と枚挙に暇がないが、その壮絶な居住空間が九龍城だったのだ。


再開発される前、非常に恐れられていた九龍城だが、実際に行って見ると、単に家賃が

安いアパートとして一般人や貧乏外国人が暮らしていた所だった。香港は土地が狭いので

非常に家賃が高く、収入の少ない人には格好の物件であった。もちろん、貧しい人が多い

ので犯罪は起きやすい。外国人犯罪も多く、また麻薬を使用する人も多かった。そういう

意味では確かに魔窟だが、行くと即殺されるわけでもない。


このように、廃墟として放置または解体されるべき建物が、その寿命を超えてもなお、無理矢

理使用されていたわけだ。pcfxが訪れた部屋には、上の階が落ちてこないように、居間の

真ん中太い柱を二本増設して、邪魔でしょうがないリビングライフを送っている家もあった。

その一家の夢は、家賃の安いここに住めるだけ住んで貯蓄し、将来オーストラリアに移住

する事だった。






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